沖縄の植民地的近代 (単行本)

台湾へ渡った人びとの帝国主義的キャリア

沖縄の植民地的近代
フォーマット:
単行本 電子書籍
著者 松田 ヒロ子
ジャンル 歴史
出版年月日 2021/03/31
ISBN 9784790717546
判型・ページ数 A5・272ページ
定価 4,180円(本体3,800円)
在庫 在庫あり

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沖縄にとって〈植民地〉とは何だったのか?

琉球併合以来、日本人による差別と偏見に苦しんだ沖縄の人びとは、植民地支配下の台湾でどのように生きたのか。支配―被支配の間を往復した人びとの経験から、沖縄の近代と日本帝国主義を再考する。


――おわりにより

 日本が東アジアにおいて帝国主義的拡大を進め、地理的に近接する台湾を植民地化することにより、琉球列島は国民国家としての日本の辺境に位置づけられるとともに、〈内地〉と〈外地〉の境界領域となった。したがって、沖縄県の近代は辺境性と境界性という二面性の中で捉えられるべきである。

 植民地帝国日本における近代沖縄の辺境性と境界性を具現化したのが、二〇世紀初頭の沖縄県から台湾への人の移動の興隆である。移動は、買物や通院、観光といった日常生活の延長上にあるようなタイプのものから、就職や進学を目的とした長期の滞在、さらには家族ぐるみでの移住といった定住型の移動まで多様な形をとった。本書では、一見両極端と思われる、小学校を卒業してすぐに台湾に渡航し現地で店員や女中として働いた出稼ぎ者と、沖縄県内で中学校や師範学校を卒業後に台湾で医学を学ぶために進学目的で渡航した若者たちの植民地的近代経験について検討した。

 両者に共通するのは、国民国家としての日本の中で周縁化されていく沖縄県で生まれながらも、沖縄の境界性を利用しつつ帝国主義的キャリアを形成した点である。人びとは、植民地帝国日本において辺境であると同時に境界であるという沖縄県の特異なポジションを利用しながら移動し、上昇を志向する近代的主体として植民地台湾を生きた。……

(webマガジン「せかいしそう」で、「おわりに」を全文読めます)
序章 沖縄の近代を再考する
 一 境界領域としての沖縄 
 二 台湾の植民地化と人の移動
 三 植民地帝国のモダニティ
 四 沖縄県と台湾間の人の移動
 五 主観的資料と日本帝国史
 六 本書の構成と表記について

第一章 沖縄の人びとはなぜ海外へ向かったのか?
 一 沖縄海外移民の幕開け
 二 海外移民と沖縄系移民コミュニティ
 三 「総督府王国」の成立と沖縄系移民
 四 植民地台湾のエスニック・コミュニティ
 五 小括

第二章 帝国の拡張と八重山の近代
 一 フロンティア開拓と住民の抵抗
 二 資本主義経済への包摂
 三 植民地開発と八重山社会への影響
 四 農民の周縁化と台湾への移動
 五 なぜ八重山住民は台湾へ向かったのか?
 六 小括

第三章 「出稼ぎ者」の帝国主義的キャリア形成
 一 内地延長主義のもとの人の移動
 二 〈支配者〉と〈被支配者〉の間
 三 より良い将来を求めて
 四 ジェンダー化された帝国主義的キャリア
 五 「日本人」への同化と象徴的地位の上昇
 六 小括

第四章 植民地医学と帝国主義的キャリア形成
 一 沖縄県における近代医療の萌芽
 二 近代医学教育の展開
 三 沖縄から台湾へ――山口秀高の軌跡
 四 植民地医学と南方進出
 五 なぜ台湾の医学校なのか?
 六 植民地医学校卒業の後
 七 小括

第五章 帝国日本のクレオール
 一 霧社(むしゃ)の警察官の息子
 二 植民地で生まれた閩人(びんじん)三十六姓の子孫
 三 帝国主義的キャリア形成と転籍・改姓名
 四 日本人・琉球人・台湾人の狭間で
 五 帝国の人類学と沖縄人の誇り
 六 小括

第六章 米軍統治下沖縄への「帰還」
 一 戦時下の台湾と沖縄系移民
 二 終戦直後の台湾
 三 琉僑として、ふたたび沖縄人へ
 四 沖縄は故郷か?――帰還移民として生きる
 五 引揚者の沈黙
 六 帝国主義的キャリアの戦後
 七 小括

おわりに
あとがき
ライフヒストリー調査のインフォーマント
沖縄・台湾年表
参考文献リスト
事項索引 
人名索引

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